(Christoph Hauert and Michael Doebeli: Nature 428, 643 (2004))
2人の運転手が吹きだまり(snowdrift)の両側に立ち往生してしまった場合を想定する.両側から協力してスコップで雪を取り除き始める(cooperate)か,片方がやってくれるのをまつ(defect)かの行動選択があり得る.payoffは,得られる利得bと労力cとで表されると考える.
系全体の協力費用対効果(cost-to-benefit)係数をと定義できる.この r を変えたときに,協力者の存在割合がどう変化するかと協力者の空間分布がどうなるかがこの論文でのテーマ.
いわゆるreplicator dynamicsを考える.(それ以外にLearning dynamicsのモデルもある.1)
ただし,
この定義で,確率が1を越えることはない.
(F.C. Santos and J.M. Pacheco, Phys. Rev. Lett. 95 098104 (2005))
Barabasi and Albert(BA)のスケールフリーネットワーク(SF)上でのPDおよびSGモデルをシミュレーションした.
の確率で起こるとする.ただし,であり,PDの場合,,SGの場合,.
(L.Luthi, E. Pestelacci,M.Tomassini, Physica A 387 955 (2008))
完全グラフやランダムグラフ上のreplicator dynamicsは平均場的に扱える.結果として,システムは一様で,微分方程式によってPopulationの変化は記述できる.
これは,Santosらのモデルと規格化のしかたが違っている.(もっとも利得が高い最近接ノードの戦略をまねるモデルもある.Lozanoら(preprint))
(H. Ohtsuki, C. Hauert, E. Lieberman and M. A. Nowak, Nature 441, 502 (2006))
(F.C. Santos, J.M. Pacheco andT. Lenaerts, PLOS Comp. Biol. 2, 1284 (2006))
これまでのモデルは固定的なネット上のエージェントの戦略(strategy)に対するダイナミクスであったが,ネット自体も動的にしたモデルを考えている.
変化させるノードAをランダムに選び,利得を比較する相手(Aにつながったノードからランダムに選ぶ.A, Bの累積利得(すべての最隣接ノードとの関係から計算した利得の和)をとして,のとき次の確率でBの戦略を受け入れる.
リンク換えの頻度が大きい( W 大)ほど,Cの割合が増える.
(Martin G. Zimmermann and Victor M. Eguiluz, PRE 72, 056118 (2005))
i サイトの状態を とする.1がcooperatorをあらわす.
ふつうのreplicator dynamics
"" | C | D |
C | ||
D |
CとDの利得の分布をみた.
(社会的ジレンマの枠組みや,TDMにおける構造的方略と心理的方略のカテゴライズ,高次ジレンマなどのレビューを最初に行っている.)
社会的ジレンマの範疇で捉えられる交通問題のもっとも原初的なものとして「 道路ネットワークジレンマ」を
(藤井聡,ナカニシヤ出版,2003)
「社会的ジレンマの解消のために最も必要とされているのは,人々の”公共心”の活性化である.」(p.258)
その上で,課題として次の4つを挙げている.
- 内的動機(倫理性?)が活性化している状態では,報酬はかえってマイナスにはたらく
Bruno S. Frey and Felix Oberholzer-Gee (Am. Econ. Rev. 87, 746 (1997))
補助金などprice incentiveが内在的な公共心を破壊することが(部分的にせよ)あることを,心理学的な知見に基づく数理的モデル(?)により示した論文.
例として,原発立地域における住民意思が,補助金により私利的になり,公共心が失われる例をあげている.
いわゆるデシ(Deci)理論の「住民意思」版
1. "Learning dyamics in social dilemmas" (M. W. Macy and A. Flache, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99 7229 (2002))など